去年の今ごろ、デンマークでTM瞑想を教える機会をいただきました。
デンマークにあるマハリシ・スクールの留学中の日本人の方にTM瞑想を教えるというお仕事です。
2週間ほど滞在しました。
その学校は海のそばにあって、部屋からは海がすぐそこに見えました。
私はその場所もその学校の雰囲気もそこにいる人たちも、全部好きになって、本当によい時間を過ごすことができました。
その学校ではみなさん一緒に瞑想したり、ごはんを食べたり、散歩をしたり…大きな家族のような生活でした。
特によく思い出すシーンは、朝まだ暗いうちの食堂で、熱いミルクティーを飲んでいるところです。
朝は8時ごろまで暗いのですが、シーンとした朝の空気の中、ミルクティーで身体が温まってちょっと散歩したりすると、空がグラデーションになっていて、ほんとうに美しい場所でした。
日本人の留学生の方もデンマーク人の方もみなさんとてもいい方ばかりでしたが、なかでもスヴェンさんという方にはとてもお世話になりました。
長くTMを教えていらっしゃる教師の大先輩で、私が行く前からメールでいろいろやりとりをして、デンマーク到着時には空港まで迎えに来てくださいました。
スヴェンさんは、私が朝一人で食堂でミルクティーを飲んだり、ちょっとパソコン作業をしていると、いつのまにかそばにやって来ます。
こちらが気づいて「morning!」と言うまで、のそっとその場にいるのです。
何か用事かな?と思うとそういうわけでもなく、二言三言会話をするとどこかへ行ってしまいます。
「困ったことはないか?」と気を配ってくださっていたのかもしれません。
真顔でよく冗談を言う方で、私の英語力ではあまりわからなかったのですが、それでもなんだか力の抜けた、おもしろい人だなぁという印象がありました。
普通は英語で話そうとすると「通じるだろうか?」と心配なことが多いのですが、スヴェンさんはとにかく受け入れる力が高い方なので、私の英語が間違っていても、なんだかよくわからないことを言っていても別に気にしないような気がして、私も緊張せずに話せた気がします。
いつも髪がくしゃくしゃ、よれよれの格好でしたが、ある日ちょっとした祭典があった時は、パリッとしたジャケットを着ていました。
祭典が終わるとすぐいつものよれよれの格好に戻っていたので、「あのかっこいいジャケットはどうしたの?」と聞くと「あれは、写真用だよ」と笑っていました。
滞在が終わって日本に帰るときは、また数ヶ月後に来る気分で、距離が遠いわりには、またすぐ会うんだろうなと思いながらお別れしました。とても素敵な場所だったので、仕事でなくても来ようと思っていました。
海外の方でも同じTM瞑想をやっている方ですととても親近感がわきますし、特にTM教師の方とは同じ思いで同じ仕事をしているので、さらに身近に感じることが多いです。
中でもスヴェンさんは、なんとなく波長が合うというか、優しくて受け入れる能力が高くてどこか不器用な感じが素敵だと感じていました。
いつも髪をくしゃくしゃにしているので、帰国の日、駅まで送ってくれたときに「髪をとかしてね」と言うと、「Thank you, mother!」と笑って、「私にはケアしてくれる人が必要かもね」と言いました。
ほんとそうだな、誰かお世話をしてくれる人がいたらいいのに…とその時思ったのをよく覚えています。
そのスヴェンさんの訃報が数日前に届きました。突然のことだったようです。
とても遠いところにいるのに、身近に感じていた人でした。
またすぐに会えると思っていました。
スヴェンさんは、たくさんの人にTMを教え、たくさんの方の面倒をみてこられて、その長い人生の中で私がお会いできたのはたったの2週間足らずでしたけど、ご縁があったのか、私にとって大切な忘れられない人となりました。
人生っていろんなことが起こりますね。
人と関わるときにはいつもベストを尽くしたいと改めて思いました。